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性的な多様性を保障するしくみを作りたい [性的な多様性・LGBTI]

(2010年3月17日(水)の活動日記その2)

● 性的な多様性を保障するしくみを作りたい

 横須賀市議会では、1年ごとに所属する委員会を交代する仕組みです。

 そこで今日が今年度のフジノにとって
 教育経済常任委員会として最後の日でした。

 委員会というのは4つあるのですが
 毎年、大会派から順番に割り振られていくので

 フジノのような無所属は
 どの委員会に所属できることになるのかは、
 全く分かりません。

 だから、今日がフジノにとって政治家人生を通じた最後の
 『教育経済常任委員会』になる可能性もあります。

 そこで、最後ならばどうしても質疑をしておきたかったのは、
 この2つについてでした。

 第1に『性的な多様性の保障』について。

 第2に『メンタルヘルス・リテラシー教育の導入』についてです。

 どちらも政治家フジノにとって、本当に大切なテーマです。

 まず、いわゆる『性的マイノリティ』とされる方々について言えば、
 幼少期や思春期に置かれた環境によって
 こどもたちの人生が大きく変わってしまうことがあります。

 その環境を少しでも良いものにすることは
 政治家として当たり前の仕事だと信じています。

 いわゆる『性的マイノリティ』とされる方々のいのちを守る為にも
 『性的な多様性の保障』が絶対に不可欠なのです。

 そんな訳で、予算審議が終わった後に行なった
 今年度最後の質疑の一部をご紹介します。


 (2010年3月17日・教育経済常任委員会・フジノの質疑より抜粋)

 <フジノ>
 いわゆる『性的マイノリティ』とされるこどもたち、
 『性的な多様性の保障』についての質問です。

 まず1点目ですが、

 新年度予算の中で、市民部人権・男女共同参画課の取り組みとして
 『(仮称)横須賀市人権施策推進会議』が開催される予定ですが

 この会議に教育委員会からはメンバーとして
 参加は予定されているんでしょうか?

 <学校教育課長の答弁>
 学校教育課の方から
 参加をする形ですすめております。

 <フジノ>
 その際に、教育委員会から提案をしたり
 これを議題としてほしいというようなイメージというのは
 ある程度あるのでしょうか。

 <学校教育課長の答弁>
 『性的マイノリティ』の部分ということに
 限定した訳ではございませんけれども

 やはりこどもを含めた人権問題というのは
 非常に大きな要素を持っておりますので

 そういった部分についても
 新たな提案ということではございませんけれども

 現状のものをどうやって定着させていくかということについては
 検討の中に加わっていきたいというふうに考えております。

 <フジノ>
 (こどもの人権)全般的なことを提案していくということで
 理解はしておるんですが

 ぜひ『性的な多様性の保障』についても
 積極的にとりあげていただきたいと思います。

 先日、毎日新聞で2月12日に1面で大きく報道されて
 教育関係者の方々に大きな衝撃をもって受け止められたニュースとして

 埼玉県の公立小学校において
 『性同一性障害』と診断された小学2年生の男児(8才)に対して
 学年の途中から女児としての登校を認めているということが分かった、と。

 (2010年2月12日・毎日新聞・朝刊より一部抜粋)
12mainichi.jpg

 本来、こういうことについては国のしっかりとした指針が示されて
 実態が把握されて、指針が策定されて、

 学校現場に判断をおしつけないということが
 在るべき姿だと思うのですが

 今のところ、国の動きが見えてこない中で
 こういうことっていうのはどんどん増えてくると思うんですね。

 そんな時に、横須賀市の教育委員会においては
 研修もすでに行なわれておりますし

 実際に性的マイノリティの方々の大学生と
 教育長をはじめ部課長にお会いしていただいた、
 ということもありました。

 そこで、まず1点目としては
 先ほどの『人権施策推進会議』においてもテーマとして
 積極的にとりあげていっていただきたい、ということ。

 そしてもう1つは、こういった問題は
 今後、現実のものとして起こっているし起こりうると思いますので

 横須賀市教育委員会としては
 どんなふうに対応をお考えになっておられるのかということを
 うかがいたいと思います。

 <学校教育課長の答弁>
 藤野議員がおっしゃったように
 すでに昨年度・今年度と
 教員に対する研修を2年間、実施をしております。

 昨年度の校長会議の中でも
 特に『制服』の扱いの問題につきましては
 当該の保護者あるいは本人とも十分に話をしながら対応するように
 ということで進めているところでございます。

 次年度につきましても同じように
 まず教員の意識を高めていくような取り組みを
 さらにすすめていきたいと考えております。

 人権施策推進会議の中でも今お話したような中身につきまして
 教育委員会としても話し合っているということにつきまして
 報告してまいります。

 <フジノ>
 今、課長から頂いた御答弁というのは
 とても納得できるものなのですが
 まず教員のみなさんの意識と理解を深めていただく、と。

 日頃カミングアウトできない方々が
 一番最初に相談するのがやっぱり先生ということなので
 先生がばっちり支えてくれるというのが一番安心だと思うのですが

 (けれども)最近も当事者の方々とお話をしていると

 「そういう『実をとる研修』はありがたいのだけれども
  やはり「性的マイノリティに対応する」と銘打った窓口があると
  ありがたい」

 という声をよくうかがいます。

 「相談をしてもらえれば、横須賀市はかなり対応をやっているんですよ」

 というお話を(僕は)するんですが

 「やはり、例えば、教育相談の中で
  性的マイノリティの相談を受けてますよというふうに名乗ってほしい」

 と言われることがあります。

 そういう意味では『実をとる研修』を
 ずっとやってきていただいているのですが

 対世間という意味で『性的マイノリティ』の方々に
 「性的な多様性を保障していくよ」ということを
 教育委員会として打ち出していく予定は無いでしょうか。

 <生涯学習部長の答弁>
 この問題というのは先ほど藤野議員がおっしゃったとおり
 カミングアウトがなかなかできない。

 学校の1つの対応としては
 本人もそうですけれども
 保護者と一緒にその子を育てていかなくてはいけないという中で

 その中でもちろんその子に寄り添って教員は動いていく訳ですけれども
 保護者との対応ということも
 いろいろ考えていかなければならないのかなと。

 したがいまして、『個々対応』の中で
 人権ということは前回の委員会の中でも
 教育長は「人権を一番大事にしていきたい」ということで
 それはもう全く変わっていないところでございます。

 その子の持っている人権というものを大事にしていきながら
 『個々対応』の中で進めていきたいなというふうに思っています。

 全てこの相談内容を明らかにしてということは
 なかなか難しいのかなというふうに思いますけれども

 どんな相談が来ても寄り添っていくということだけは
 これは確かですので

 そういった形の中ですすめていきたいなと思っております。

 <フジノ> 
 対応・対策を『個別』に万全にやっていくという姿勢は
 揺らぎの無いものをこの数年間感じさせていただいていて
 そこへの信頼というのは変わらないのですが

 相談の内容、
 そもそもこういうことを相談してよいのか分からない
 というような方々がたくさんおられるので

 対外的な意味で名称を出したり
 相談内容の中の一項目に広報物の一部なんかに
 性的マイノリティの方の相談というものを
 そろそろ入れていただきたいなという想いを持っております。

 できれば研究や検討をしていただきたいなと思いますが
 いかがでしょうか。

 <生涯学習部長の答弁>
 教育相談の1つの中に様々なものが入りますので
 その中にどう入るのかどうかということも含めて
 研究させていただきたいと思います。

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 残念ながら平行線のままに今年度の議論は
 終わってしまいました。

 教育委員会の側はあくまでも『個別に対応する』ことを主張し、

 フジノは『性的な多様性を市として保障すると明言すること』を
 主張し続けるという形となりました。

 くりかえしフジノが訴えてきたとおり、
 横須賀市と教育委員会は『性的な多様性』をしっかり守ってほしいです。

 何故なら、すでに横須賀市は『人権施策推進指針』を打ち出しており
 (http://www.hide-fujino.com/diary/2009/feb3.html#090209-3

 その中にいわゆる『性的マイノリティ』とされる方々に関しても
 人権課題として位置付けているからです。

 学校現場の先生方お1人お1人の判断に任せずに
 (別の言い方をすれば、先生1人に押し付けずに)

 教育委員会として、横須賀市として、
 万全なバックアップ姿勢を取るべきだとフジノは主張し続けます。


● 人生の先輩もまた闘っている

 市議会での議論を終えて事務所に戻って
 新聞を読み込んでいました。

 すると、毎日新聞に
 『自殺』と『性同一性障害』の関係について記したコラムがあり
 とても目を引かれました。

 下に引用させていただきます。

 (2010年3月17日・毎日新聞・朝刊より)
17mainichi.jpg

 「自殺」を減らすならば


 「いきなり手荷物を検査され、何事かと思いました」。

 東京で今月あった自殺と貧困のシンポジウムに参加した知人の話だ。
 市民団体の主催で気軽に出向いたが、
 会場に入ると鳩山由紀夫首相、長妻昭厚生労働相、
 福島瑞穂内閣府特命担当相が勢ぞろい。厳戒の意味が分かったという。

 政府は自殺者の多い3月を対策強化月間として、
 中高年男性のうつ病早期発見キャンペーンなどに乗り出した。

 父親が娘に「お父さん、最近眠れてないんでしょ?」と言われて
 はっとするというCMを見た人もいるだろう。

 年間3万人の自殺者の大半は働き盛りの男性や高齢者が占める。

 でも最も憂うべきは、
 小さなうちに抱えきれない悩みを背負った子どもたちではないか。

 少子化が嘆かれる時代に毎年600人近い未成年者が自ら命を絶つ。
 かなり深刻なことだと思う。

 動機の1つとして専門家に指摘されてきたのが、
 性同一性障害(GID)だ。

 自分は女の子のはずなのに、なぜ体は男なのか。
 男子の制服を着たり、男子トイレに入るのがつらいけれど、誰にも言えない。

 成人後にGIDと診断された半数以上が
 就学前から心と体の性の不一致に苦しみ、
 7割が自殺を考え、
 2割は実際に試みたり自傷行為に及んだとのデータもある。

 ところが、この問題への鳩山政権の対応はあまりにつれない。

 児童・生徒のつらさを和らげようと知恵を絞る学校がある一方で、
 全く理解のない学校もあるのに、各校の対応に任せきっている。

 自殺問題では対策に欠かせない統計の乏しさが指摘され、
 最近やっと動機のデータなどがそろってきた。
 子どものGIDも、国としてまず実態を把握すべきだ。

 (引用終わり)
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 読み終えて、ささやかな感動を覚えました。

 このコラムを書いた磯崎記者の想い・主張は
 まさにフジノの想い・主張と一致していました。

 この活動日記で記すのは初めてのことなのですが
 かつて就職活動をしていた21歳のフジノは

 毎日新聞の磯崎由美記者に会っていただきました。
 いわゆるOB・OG訪問です。

 今から14年前、フジノは新聞記者を目指していました。
 大熊一夫さんのように精神保健医療福祉のルポを書けるような
 ジャーナリストになりたかったのです。
 (http://www.hide-fujino.com/diary/2003/nov2.htm#journalist

 けれども、新聞記者になるにはどうしたらよいのか、
 全くわかりませんでした。

 そこで、ふだん読んでいた新聞の会社に片っ端から電話をかけて
 気になる記事を書いていた記者の方に
 ひたすら会ってもらえるようにお願いをしまくったのでした。

 どこの馬の骨とも知れないフジノの無謀なお願いは
 ことごとく断られ続けたのですが
 何とこころよく会って下さった方々もいました。

 その中のお1人が、毎日新聞・磯崎由美記者でした。

 磯崎記者は当時から優れた視点で記事を書いていらして
 気になる記事があるといつも署名は「磯崎由美」となっていました。

 だから、実物にあっていただけることになった時は
 それはかなり緊張したことを覚えています。

 それから14年が経って、フジノの肩書は
 残念ながら新聞記者ではありません。

 けれども、あの大学時代にとても親切にアドバイスをくださった
 『人生の先輩』が今もバリバリ活躍しておられることを
 今も毎日新聞を読むたびにフジノは知るのです。

 そして、僕も負けてはいけないと改めて感じるのです。

 今日のコラム、本当にうれしかったです。

 磯崎記者からすればたった1度(いや、2回かも)会っただけで
 その後は14年間音信不通のヤツから

 その記事を励みにがんばっていると
 いきなりHPに書かれても、困ってしまいますよね...。

 でも、『自殺』と『性的な多様性の保障』について
 尊敬する人生の先輩が同じように関心を持って下さっていることを
 こころからうれしく感じました。

 ますますフジノはがんばっていこうと感じました。

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 と、このことを毎日新聞の複数の知り合いにつぶやいたら
 「磯崎記者に会ってもらえばいいのに。でも忙しい方だよ」と言われました。

 確かに、14年前のように「会って下さい!」と
 お願いしてみるべきですね(汗)。

 僕は、たくさん御礼を伝えなければいけないですね。

共通テーマ:日記・雑感

「性的マイノリティの人権」が人権施策推進指針に記されました [性的な多様性・LGBTI]

(2009年2月9日(月)の活動日記その3)

● ついに人権施策推進指針が完成しました

 長年にわたって追い続けている取り組みが
 フジノにはいくつもあります。

 その1つが『人権施策推進指針』の策定です。

 あらゆる人権課題の中でも
 特に『性的マイノリティ』についてフジノは強く関わってきました。

 市民のみなさまの生の声を反映させたくて
 フジノのこの活動日記でも何度もご協力を呼びかけたことをはじめ、

 性的な多様性の保障の為に活動する
 とても素晴らしいサイト『デルタG』にもご協力していただいて
 全国のみなさまからご意見をいただきました。

 昨年2月の『横須賀市人権都市宣言』発表を受けて
 昨年3月11日に『人権懇話会』から
 『(仮称)人権施策推進指針』提言書(案)が提出されました。

 この提言書をガイドラインとして、
 昨年7月には、関係課長11名で『プロジェクトチーム』を結成し、
 実際の『指針』作成が始まりました。

 9月には、このチームが作った案を市役所内で全庁意見照会し、
 さらに11月には市民のみなさまに
 パブリックコメント手続きを行ないました。

 こうした長い時間をかけた末に
 今日、正式に『横須賀市人権施策推進指針』が発表されたのです!

09humanrights.jpg

 ようやくできました...。

 「実行することにこそ意味がある」

 と考えているフジノにとって、指針(ガイドライン)を作成するのに
 これではあまりにも時間をかけ過ぎたと感じています。

 ...ともかく、中身を読んでみましょう!


● 「性的マイノリティの人権」が人権施策推進指針に記されました

 『指針』の最後の方、20ページです。

09sexualminority.jpg

 『第3章2.(8)④性的マイノリティの人権』の項目です。
 また、これに加えて欄外の注記1と3も該当する部分でしょう。

 (引用ここから)
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 第3章 人権施策の基本的な方向

  2.分野別課題解決への基本的な方向

  (8)その他の人権課題

   ⑧ 性的マイノリティの人権

     例えば、性同一性障害者(*3)は、
     現在、日本全国で約5千人いるとも言われています。

     性同一性障害に対する救済制度として
     「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が
     制定されましたが、

     この法律の適用対象になっている人は
     1割程度と言われています。

     社会における現状は、
     性同一性障害者を受け入れる環境が
     いまだ整っているとは言えない状況にあります。

     さまざまな性的マイノリティに対して、「ふつう」ではないとして、
     偏見を持ち、差別、蔑視し排除することをなくし、

     社会の多数派と異なる生き方を認める社会を
     構築していく必要があります。

 (欄外の注)

 *1 性的マイノリティ
  性的少数者と訳される。
  性同一性障害者や同性愛者、両性具有者など、
  性をめぐって、社会的に差別を受ける恐れのある人々の総称。

 *3 性同一性障害者
  性別に関する自己意識と身体上の性別とが一致せずに苦しむ人たち。

(引用おわり)
--------------------------------------------

 うーん、いかがでしょうか?

 フジノはこれまで繰り返し訴えてきたことは、

 『性的マイノリティ』=『性同一性障害』だけではない

 ということでした。

 本文の大部分では性同一性障害のみに触れており、
 ラスト4行になってようやく「さまざまな性的マイノリティに対して」とし、

 欄外の注記1においては
 「性同一性障害者や同性愛者、両性具有者など」と
 その対象が拡大されて定義されています。

 これを「一歩前進」と受け止めるべきなのでしょうか。
 注記の「など」に「バイセクシャル」も含まれる、と
 寛大に受け止めるべきでしょうか。

 それともやはり本文そのものに
 「性同一性障害」だけではなく
 「同性愛」「両性具有」「バイセクシャル」などが明記されるよう
 再びフジノは提案していくべきでしょうか。

 フジノが本会議で行なった一般質問に対して
 下卑た笑い声や差別的なヤジが飛ぶような保守的なまちであっても

 ここまで歩みを進むことができたということを
 一歩前進と受け止めるべき...?

 いや、それは違うな。やっぱり違う。

 保守的なまちであろうがなかろうが、
 「絶対に人権を守るのだ!」という信念をこそ、保守すべきです。

 やっぱり文章にもきちんと全て明文化することが大切ですよね。

 その文章をもとにして
 今後、具体的にどんな取り組みによって
 差別・偏見・スティグマを無くしていくのか、という行動が
 決まっていくのですから。

 この点について、ぜひ改めて
 みなさまの生の声をお聞きしたいです。

 全国のみなさま、ぜひご意見ください。
 よろしくお願いします。

共通テーマ:日記・雑感

性的マイノリティの理解を広めて深めるために/委員会質疑 [性的な多様性・LGBTI]

(2008年12月9日(火)の活動日記その2)

● 性的マイノリティの理解を広めて深めるために

 市長へ直接に質疑を行なうことができる本会議に加えて
 委員会での質疑の時間をとても大切にしています。

 特に、委員会では『所管事項』という時間があって、
 担当部署についてならばあらゆることがらを
 質疑できる場になっています。

 持ち時間は1人30分のみしかありませんが、
 政策実現の為にとても重視しています。

 フジノが所属している教育経済常任委員会では

 ・教育委員会

 ・上下水道局

 ・経済部

 の3つの部局を担当しています。

 今日の教育経済常任委員会では
 フジノはこの3つの部局全てに対して質疑を行ないました。

 インターネット録画中継をもとに
 フジノが行なった質疑をご紹介いたします。

---------------------------------------------------

 いわゆる性的マイノリティとされる方々への
 正しい情報と知識を広く社会のみなさまに知っていただく為に
 いろいろな提案をフジノはしています。

 ただ単に、チラシやリーフレットを配る以外に
 どんなことができるだろうかと考えました。

 同時に、財政があまりにも厳しい現在の横須賀で
 可能な限りゼロ予算(予算を使わずに知恵を使う)でやれないかと
 横須賀市がすでに行なっている事業と
 組み合わせることを考えました。

 さらに、実際に自らの性的指向に気づく『性自認』がなされる
 小学校高学年から中学生の時期を
 ピンポイントでターゲットとすることも視野に入れました。

 そうした結果、次のような提案を行ないました。


 (2008年12月9日・教育経済常任委員会でのフジノの質疑より)

  <フジノの質問>
  いわゆる性的マイノリティとされる方々に対する
  世間一般の方々の理解を深める為に、1点ご提案をしたいと思います。

  その前に、教育長、生涯学習部長、
  生涯学習課長におかれましては、

  11月27日に実際に
  性的マイノリティの当事者である若者たちと、
  生の声を聞く・率直に意見交換を行う為の「懇談の機会」を設けて下さったことに
  心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

  それでは質問に移りたいと思います。

  現在、横須賀市の図書館では 『こども読書活動推進事業』として、
  赤ちゃんから中学生まで
  6種類のブックリストを配布しております。

  今回、例として中学生のブックリストを挙げたいのですが、
  30冊のブックリストには様々な本がございます。

  例えば『太陽の戦士』という本では、
  障がいのある人物が主人公という内容になっており、

  『読書の推進』という最大の目的と同時に、
  『障がいに対するこどもたちの理解を深める良いきっかけ』となっている
  と僕は考えています。

  一方で、いわゆる性的マイノリティを取り上げた
  児童文学の良書が最近では増えてきているのですが、
  残念ながらこのリストには1冊もありません。

  そこで提案なのですが

  例えば、11月4日に教育委員会が生涯学習センターで
  開催した人権セミナーで

  講師を務めて下さった虎井まさ衛さんが
  監修をした児童文学書、
  これは『トライフル・トライアングル』というフィクションなのですけれども、

09trifultriangle.jpg

  物語としてもおもしろく自然に性的マイノリティについての理解につながる
  といった本も出てきております。

  そこで、

  ぜひこうした本をブックリストの改定の際には入れていただけないか

  と考えるのですが、
  図書館長または教育長のお考えはいかがでしょうか。


  <中央図書館長の答弁>
  中学生のブックリストに関しましては
  平成20年度から配布を始めました。

  当然、来年度も改訂をいたしますので
  その中で性同一性障害のものも取り上げられれば取り上げていきたい。

  私どもの司書と学校の図書担当、
  それから指導主事と相談しながらやっていますので

  その中で、そういうことを検討していきたいと思います。

  <フジノの意見>
  ありがとうございます。
  司書の方々の自主性・独立性を奪うつもりはございませんので
  ぜひ検討の中に入れていただくという形で
  研究・検討していただければと思います。

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 図書館長からは前向きな答弁を受けました。

 わずか30冊という限られた本の中で
 中学生たちが
 実際に手にとって読みたくなる本のリストを作成する作業は
 本当に大変なことだと思います。

 けれども、わがまちの図書館司書の方々には
 良き経験とノウハウが蓄積されています。

 必ず良い方向に進めていってくれるはずだと信じています。


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 ところで、質疑の中でとりあげた『トライフル・トライアングル』ですが
 児童文学といいつつも、大人が読んでも十分楽しめます。

 フジノは風呂に入りながら読みおえてしまいましたし、
 ページ数はそんなに多くはありません。

 けれども、双子の主人公の物語に
 ひきこまれていくうちに

 性同一性障害や性的な多様性についての理解が
 自然と広がっていく内容になっています。

 ぜひみなさまも読んでみてくださいね!
 おすすめです。

共通テーマ:日記・雑感

教育長との懇談会がついに行なわれました! [性的な多様性・LGBTI]

(2008年11月27日(水)の活動日記その2)

● 教育長との懇談会がついに行なわれました

 ついに今夜、横須賀市で初めての

 いわゆる性的マイノリティとされる方々と
 教育長をはじめとする行政担当者との懇談会が行なわれました。

 (これまでの経緯:http://www.hide-fujino.com/diary.htm#081023

 ざっくばらんな懇談とする為に
 プレスリリースなどは一切なしとさせていただきました。

 横須賀市からは、4名が出席しました。

   教育長(教育行政のトップ)、

   生涯学習部長(学校教育の責任者)、

   生涯学習課長(社会教育の実務責任者)、

   人権・男女共同参画課長(人権施策の実務責任者)

 です。

 そして、いわゆる性的マイノリティとされる当事者として
 10代後半から20代の若者6名が参加してくれました。

 さらに、お2人の方にも参加していただきました。

 『“共生社会をつくる”セクシャルマイノリティ支援全国ネットワーク』の
 代表である原美奈子さんと

 (http://kyoseinet.blog25.fc2.com/blog-entry-1.html

 『カミングアウト・レターズ』の著者である
 RYOJIさんです。

 (http://books.yahoo.co.jp/book_detail/31995078

 19時から21時まで
 約2時間にわたって、懇談が行なわれました。

 もともと2時間でお話が尽きるものではないテーマですし、
 フジノの仕切りがとても悪かったせいで

 参加してくれたみなさまにとって
 消化不良というか、
 もっともっと話したかったのではないか、と後悔が残りました。

 参加してくれた8名のみなさま。
 雨の中を横須賀まで本当にありがとうございました。

 また、教育長をはじめ、行政側のみなさま。
 市議会直前のお忙しい中を本当にありがとうございました。

 ぜひ、2回目、3回目と、この機会を続けていきましょう!
 どうぞよろしくお願いします!


● もっともっと『生の声』を!

 今日はオープンな場ではなかったので
 懇談会の内容も記すのは避けたいと思うのですが

 「横須賀市で初めて」というよりも
 全国的もこんな機会は本当に珍しいのではないかと思います。

 教育行政のトップと、人権施策の責任者がともに
 いわゆる性的マイノリティとされる当事者の若者たちの
 リアルな生の声を聴くために
 直接にお会いして懇談会を行なったのです。

 横須賀市の姿勢は、全国に誇れるものだとフジノは感じます。

 (他都道府県や他市町村で、こういう例がすでにあったら
  ぜひとも教えていただきたいです)

 初回ということで、お互いに緊張もあったと思います。

 でも、こういう機会がもっともっと増えていけば
 必ず現状は良い方向へさらに変えていくことができます。

 その為にも、どうかもっともっと生の声を
 フジノや横須賀市に届けてほしいのです。

 性的な多様性が存在するのは当たり前のことです。

 その多様性が保障されないで
 つらい想いや理不尽な体験をさせられているとしたら
 それは社会の側が間違っているのです。

 レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、
 インターセックス、トランスジェンダー、などの

 あらゆる性的な多様性は、問題ではありません。
 その多様性を受け入れられていない現状の社会の側が問題です。

 これからも、政治・行政としてできることは何か、
 もっともっと考えて、そして、実行していきたいです。

 どうかみなさまの生の声を聴かせてください!
 よろしくお願いします!

共通テーマ:日記・雑感

虎井まさ衛さんと横須賀市が本気で話し合った [性的な多様性・LGBTI]

(2008年11月4日(火)の活動日記その5)

● 虎井まさ衛さんと横須賀市が本気で話し合った

 虎井さんの講演が終わると、質疑応答になりました。

 熱の入った講演で予定の時間も超えていたこともあって
 5人ほどの質問で終わりました。

 終了後、会場内の他のお客さんが帰った後も
 フジノは配布されたアンケートへの回答を書いていました。

 こういう機会を教育委員会がつくったこと、
 講師として最適な方を選んだこと、
 講演の内容もとても分かりやすく率直なものであったこと、
 そうしたこと全てに感謝していることを記しました。

 アンケートを提出する時に
 教育委員会の方に

 「最後まで教育長は講演を聞いていらっしゃいましたよね?」

 と尋ねると

 「そうなんです、フジノ議員!
  すぐ後に別の用事が入っている為に
  終了と同時に会場を出ましたが、最後までいらっしゃいました」

 との返事でした。

 やっぱり教育長、気合いが入っている。
 うれしい。

 「虎井さんに僕からも講演の御礼を申し上げたいのですが...」

 と言うと、控え室に案内してくれました。


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 控え室に入ると、虎井さんと共に
 教育委員会(生涯学習担当)メンバーだけでなく
 わが市の人権・男女共同参画課長も来てくれていたのでした。

 手前ミソですが、異動で今年から来た
 人権・男女協同参画課長は
 性的な多様性の保障に取り組むという意欲を感じます。
 (先日、横浜SHIPのパンフレットを持っていった時もそう感じました。
  http://www.hide-fujino.com/diary.htm#heknew

 虎井さんと市側メンバーの許可をいただいて
 フジノも同席させていただきました。

 さっそくフジノが名刺をとりだして

 「虎井さん、突然おしかけてすみません。
  横須賀市議会議員の藤野英明と申します。
  このたびは、講演を引き受けて下さってありがとうございます」

 と述べると、

 「藤野さん、存じ上げていますよ。
  お会いできてうれしいです。ブログ、拝見しています」

 と、虎井さんからありがたいお言葉が!

 プロの作家であるだけでなく、
 性的な多様性の保障の為にまさに闘ってきた
 虎井さんに、そんな言葉をかけていただけるなんて光栄です...。

 フジノが政策として性的な多様性の保障について
 本格的に勉強を始めたのは
 まだまだ数年程度のことなのですね。

 そんなフジノでも、日本でのこの課題の歴史を調べれば
 虎井さんの存在や活動というのは、すさまじく大きな存在なのです。

 ドラマ『金八先生』第6シーズンの上戸綾さん演じる
 性同一性障害の生徒のストーリーによって

 日本全国にあっという間に
 性同一性障害という存在が知れ渡りました。

 もちろん、脚本家の存在があったからこそ、とか
 『金八先生』シリーズの存在があったからこそ、とか
 いろいろな見方はあるとは思います。

 でも、あの第6シーズンが日本全国に受け入れられたのは
 それが実話に基づくということが、大きかったはずです。

 そこに、虎井さんという存在があった、ということが
 本当に大きかった、とフジノは考えています。

 この国で何かの問題が大きな改善を迎える時、
 いつも誰かしら犠牲者(サクリファイス)ともいうべき存在が
 必ず存在します。

 自らのプライバシーを諦めざるをえず、
 その自らの痛みや苦しみを世間に対して包み隠さず伝えることで
 ようやくこの国では世論が動きます。

 フジノにとって虎井さんは、
 性的な多様性をわが国で保障していく道のりを切り拓いた
 大きなサクリファイスであったと受けとめています。

 権力を持つ政治家の存在でもなく、マスコミの影響力でもなく、
 ある1人の個人の苦しみや痛みが国を動かすのです。

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 虎井さんが東京に戻らねばならない予定も延期して下さって

 それから1時間にわたって、
 教育委員会&人権・男女共同参画課長&フジノは
 虎井さんと今後の在るべき姿について
 意見交換をさせてもらいました。

 ここにはその意見交換を書けないのですが
 かなり深い議論ができたと思います。

 特に印象に残ったのは、人権・男女共同参画課長が

 「行政が本当に効果があることを取り組みたいのに
  どうしても『啓発』ばかりになってしまうのです。
  虎井さんは、実効性のある対策をどうお考えでしょうか?」

 と質問した時のことでした。

 課長はかつて広報課長だったこともあって
 広報・啓発については、プロです。

 何かの活動をやろうとすると『啓発』活動ばかりになってしまう、
 ということが往々にして全ての問題で起こります。

 例えば、自殺予防対策についても
 国の自殺総合対策会議でも

 「啓発活動主体の自殺予防を
  より実効性のある対策に変えていかねばならない」

 と、つい先日もテーマになりました。

 だからこそ、課長の言う、
 『啓発』だけではない『実効性のある取り組み』とは何か、
 という問いかけは痛いほど分かりました。

 フジノもまさに同じように毎日毎瞬間、
 いったい何を成せば実効性があるのかを必死に考えているからです。

 虎井さんという存在のおかげで
 教育・行政・政治の3者が向かっていくべき方向が
 同じ1つの道であることが改めて感じられたのは感激でした。

 最後に、虎井さんと記念写真をお願いしたら

04withMrTorai.jpg

 「こうですよね?」と、虎井さんがピースをしてくれました。
 フジノがピースをする前にです!

 このHP向けの写真をフジノがどなたかと撮る時には必ず
 どれほど昔から尊敬してきた偉大な相手であっても
 恐れずにピースをしてきたのですが

 (http://www.hide-fujino.com/encounter.html

 フジノよりも先にピースをしてくれたのは
 虎井さんが初めてでした!
 本当にありがとうございます!

 これはHPを見て下さっているというリアルな証拠ですよね~。
 それでまたフジノはすさまじく感激してしまったのでした。

 教育委員会の方々とお別れして
 生涯学習センターから逸見駅までの道のりを
 虎井さんとご一緒させていただきました。

 「こうやって講演の後に、私を囲んで
  行政と政治が一緒になって
  積極的に意見交換をしてくれたのは横須賀市が初めてですよ」

 と、ありがたいお言葉をいただきました。

 たとえリップサービスであっても
 本当にうれしかったです。

 あんまりうれしかったので、
 この言葉を今日の機会を創ってくれた教育長にすぐに伝えたくて

 用事があるから講演会終了後すぐに会場を後にして
 不在だと分かっていたはずなのに
 フジノは思わず教育委員会事務局に電話をしてしまいました(汗)。

 (当然ながら公務で不在でした...)


 虎井さん、本当に今日はありがとうございました。

 政治家としても、個人としても、
 虎井さんのような存在をこころからリスペクトしています。

 この広い世界にまるでたった1人きりで生きているような
 激しい孤独や苦しみを体験しながらも
 道を切り拓いてきて下さった方が居て下さったから

 僕たちはかつてより生きやすい社会に
 暮らすことができているのです。

 性的な多様性を保障する為に
 この国が変わっていく為に
 横須賀市からできることは全力でやっていきます。

 政治家としてフジノは
 国が動かなければ市町村には何もできない、なんて
 そんな考えを持ったことは一瞬もありません。

 だって、虎井さんのような1人の個人の生き方が
 この国を変えてきたのですから。

 横須賀市でやれることは全て
 徹底的にやっていきます。

 どうか、力を貸して下さい。
 どうか、見守っていて下さいね。

----------------------------------------------

 今月27日には、横須賀市初の
 いわゆる性的マイノリティとされる当事者の方々と
 教育長をはじめとする行政担当者との懇談会が行なわれる予定です。
 (http://www.hide-fujino.com/diary.htm#081023

 全国的にはバックラッシュの動きもあるかもしれませんが
 横須賀市は、リアルな生の声を聴きたいという姿勢を打ち出しています。

 これは、大きな前進だとフジノは信じています。

 当事者のみなさま、どうか注目していて下さい。
 そして、全てのマイノリティとされるみなさま、注目していて下さい。

 本当はこの世界に『マイノリティ』なんて存在は
 もともとありえないのです。

 人は誰もが違うのです。

 誰もが違うのが当たり前である以上、
 マジョリティ(=多数者)とかマイノリティ(=少数者)なんて
 もともとそんな分け方は成立しないのです。

 フジノは、マイノリティという概念そのものを
 この世界から無くしたいと本気で信じている1人です。

 そんな壮大な理想の前には、
 今日の講演や教育長との懇談会でさえも
 ささやかな一歩に映るかもしれません。

 けれども確実に言えることは、前に進んでいるということです。
 一緒に前に向かって歩いていきましょう。

 必ずこの国は変わるし、変えるのは他の誰かではなく、
 あなたと僕たちの力なのです。

共通テーマ:日記・雑感

「性同一性障害を知っていますか」講演会(後編) [性的な多様性・LGBTI]

(2008年11月4日(火)の活動日記その4)

● 虎井まさ衛さん講演会「性同一性障害を知っていますか」(後編)

 虎井さんの講演の最後の部分です。

 (前回&前々回と同じく
  ここから先の内容は全てフジノのメモを元にしておりますので、
  誤った記述があるかもしれません。

  それらの文責は全てフジノにありますので、
  どうかあらかじめご了解ください)

------------------------------------------------

 <虎井さんのお話>

 性別適合手術を終えた後も、戸籍上の性別は違う訳です。
 そのことが社会的にどんなにつらいかということが
 大人になるにつれて分かってきました。

 手術が終わって、借金が山のようにあったのですが、
 本来ならば体調の為に療養しなければならない時期に
 私は工場に働きに行きました。

 自分は男性として働きました。
 手術をしました、とは言わなかったです。

 かつてとは異なって現在では、就職面接で
 「私はトランスジェンダーです」と自ら言える人もいると思います。

 けれども、かつては言えませんでした。

 当時は、住民票みたいな身分証を見せなくても
 履歴書だけで就職試験が受けられました。

 だから、履歴書の性別欄には
 男に丸をつけて出していました。

 採用されて就職したのは、プラスチック成型の工場でした。

 映画『男はつらいよ』に出てくる
 下町のタコ社長にそっくりの感じの工場でした。

 本当に従業員同士のプライバシーもへったくれもないような
 寅さんの葛飾柴又のような感じの所に
 大きなヒミツを持って入っていったのです。

 それでも通算7年間、楽しく働きました。

 今と同じ外見で、性格も変わらなかったので、
 みんなとはうまくやっていけていました。

 バブルの時期だったので
 スタートは時給が600円だったのが1800円になったりしました。

 1回目の手術を終えてから2年間はそのまま働きました。
 その後、ペニスをつける為の手術をする時に
 海外に留学するので辞めます、と伝えました。

 それでも「留学が終わったら戻っておいで」と言っていただき、
 手術をしてから、4ヶ月後には仕事に復帰しました。
 それからこの工場で5年くらい働きました。
 23~30才まで働いた訳です。

 ところで、性別適合手術やホルモン注射など
 女性から男性へという人は、とても年齢より若く見える。

 ホルモンの関係で、ひどくにきびができる人が多いんですね。
 私はそのせいで、高校生だとばかり思われていました。

 28歳です、と言っても
 職場の中高年の人々に何度話しても
 高校生だと思われている。

 明日30才の誕生日、という晩に
 私のことを幼い頃から悪態をつき続けてきた父親が
 ふと、「おまえもとうとう30才か」としみじみとつぶやいたんですね。

 その言葉のニュアンスに、
 ああ、自分も父にやっぱり愛されているかも、と考えました。

 そんなこともあって、

 「明日工場で自分は30才だと言おう」

 と決心しました。

 これまでも何回も年齢を言っても忘れられてしまうので
 今回は、ハッキリと強めに言うことになりました。

 つまり、宣言をしたんです。

 でも、30才だと宣言をした途端に
 まわりの態度が変わってしまったのです。

 それまではいろんな雑談をしてきたのが
 30才だと宣言をした後は
 聴かれることが2つしか無くなってしまいました。

 1つ目が、何故結婚しないの?
 2つ目が、何故正社員にならないの?です。

 もう、毎日聴かれました。

 下町の工場ですから、
 プライバシーの詮索をしてはいけないという感覚が
 当時は全くありませんでした。

 7年もいたから、いろいろなことを言われ続けながらも
 何とかごまかしていました。

 でもある日、1人のおばちゃんが
 お見合い写真を持ってきたんです。

 実際に写真を見た時に
 「ああ、タイプの女性だ」と思ったのですが

 まかりまちがって相手が気に入ってしまったら、
 戸籍上は女性同士だということが分かってしまう。

 そうしたら、紹介してくれた人に迷惑がかかってしまう。

 そこでお見合いを断りました。
 同時に、ここまで事態が厳しくなってしまったら
 いずれバレてしまう。

 私は、お見合い写真事件の5日後に
 会社を辞めました。

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 退職をしてから、FTMのミニコミ誌を出しました。

 仕事をしていた時は朝8時半から17時まで
 きつい肉体労働をしていたので、夜中にミニコミを作るのはムリでした。

 でも、いつか作ろうとずっと考えていました。

 かつてアメリカでミニコミ誌を見てから
 青写真を考えていたんです。

 それが仕事から解放されたので
 3ヵ月後にフル回転で雑誌を出しました。

 何かこころに穴が開いていたような気がしたから。

 やっぱり7年間も一緒に働いてきた仲間だったですし、
 かなり下町的なつきあいをしてきたのが
 急にぷっつり関係が切れたことを残念に感じたのです。

 会場のみなさんは
 戸籍上の性別欄をほとんど意識しないと思います。

 神奈川県は公文書に性別欄を記入するところが
 改善されて無いところが多いと思いますが、

 かつてはそういった改善が全く無い時代だったので
 戸籍を変えれば
 公文書の性別を全て変えなければなりません。

 戸籍上の性別を変更することが
 可能になったのは

 性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律が
 2003年7月10日に成立をして
 2004年7月16日から施行されたんですね。

 この法律が成立する以前に
 私たちは6人のグループで戸籍訂正を求めて
 2001年5月に一斉に申し立てをしました。

 けれども全員が敗訴してしまいました。

 そうした動きの末に、国会議員の方々にも
 問題意識を持つ方々が増えてきて
 先ほどの特例法ができたのです。

 さらに、2008年6月には
 戸籍変更の要件が緩和がされました。

 少しずつ状況は改善されていっています。

 何故、戸籍を変えなければならないのでしょうか?

 それは、外見と戸籍が違うということによって
 今の社会ではいくつもの不利益があるからです。

 就職試験でも、正社員になれない。
 大家さんや不動産屋さんが家を貸してくれない。
 結婚もできない。

 講演の時間が無くなってしまいましたので
 お話の途中ではありますけれど、後は質疑応答にしたいと思います。

 この問題は数え上げればきりがありません。
 でも、だんだん良い方向に向かってきています。

 かつてはバラバラであった、
 レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど
 いわゆる性的マイノリティとされる人々が
 今は「共闘しよう!」ということで手を結びつつあります。

 本当に1人1人が違いますから
 なかなか1枚岩になれていないけれど

 それでもやってみようよということになっています。
 共闘してやれることをみんなでがんばってみようということで
 手を結びはじめました。

 私たち、当事者が活動をしていくことだけでなく
 1人でも多くの周りの人々に
 理解していただくことが大切だと考えています

 今日の講演がみなさんにとって
 そうしたきっかけになると幸いです。

 私のお話は、以上です。


 (続きます)

共通テーマ:日記・雑感

「性同一性障害を知っていますか」講演会(中編) [性的な多様性・LGBTI]

(2008年11月4日(火)の活動日記その3)

● 虎井まさ衛さん講演会「性同一性障害を知っていますか」(中編)

 虎井さんの講演のまんなかの部分です。

 (前回と同じくここから先の内容は、
  フジノのメモを元にしておりますので、誤った記述があるかもしれません。

  そういった文責は全てフジノにありますので、
  どうかあらかじめご了解ください)

------------------------------------------------

 <虎井さんのお話>

 後半は、私自身のこれまでをお話します。

 実際に、下半身の手術をしよう、と
 思いつめている人は少ないです。

 私はそのうちの1人です。

 私の母は、流産しやすい人でした。
 私の出産の前に、2人、流産をしてしまっていました。

 何とかしてこどもを作りたかったこともあって
 周囲からすすめられて、『流産防止剤』を使いました。

 これはすでに当時、欧米では使用禁止になっていました。
 ホルモンの作用で男性化する可能性が高い、という薬です。

 でも日本では「よく効く」ということで、
 使われていました。

 当時は迷信のように、妊娠したお腹が
 四角く張っていたら男の子、丸く張っていたら女の子、と
 言われていました。

 私の母は私を妊娠した時に、
 なんだか四角く張っているから男の子だろうと思っていたそうです。

 けっきょく男性ホルモンの働きをする流産防止の薬を使ったら
 生まれてきたのが私だった訳です。

 私の場合、体は女の子でした。

 こころも女の子のはずだったのですが
 外から脳の性分化の時期に
 流産防止剤のせいで
 胎児である私に男性ホルモンが入ったのではないか
 と言われています。

 これは日本のドクターだけでなく、
 アメリカとオランダのドクターにも同じことを言われました。

 私は1963年生まれです。

 日本でもようやく70年代に入って
 この薬が禁止になりました。

 70年代以降生まれの方で
 性同一性障害の方は、この薬のせいではありません。

 けれども、70年代以前に生まれた方で
 性同一性障害の方は
 私と同じように薬害でなった方もいるかもしれません。

 私の場合は複数のドクターが述べているとおり、
 このことが原因でなりました。

 この流産防止剤を使った母親とこどもは
 体が弱るという研究結果が多数あります。

 そのせいで、私も本当に体が弱くて
 幼稚園にも月1日くらいしか行かれませんでした。

 そこで本ばかり読んでいたから、
 本が大好きになって、現在、作家になったんですね。

 私は、外で遊べないこどもでした。
 ですから、性同一性障害についての
 先ほど述べたような『環境説』は全くあてはまりません。

 私の場合には特に、きょうだいは流産なので、
 全く居ませんでした。きょうだいの影響ということもありません。

 父は厳格な人だったので、
 私は母にばかりくっついていました。

 「大きくなったら自分は男になるんだ」

 と、2才くらいからずっと言っていたそうです。

 幼すぎて自分自身の記憶は
 当然ないのですが 
 まわりの人がそう言っていたのを憶えています。

 自分自身の記憶がはっきりしている
 性自認は幼稚園くらいの頃でした。

 みなさん、ここで3分間だけ、目をつぶってください。

 ご自分の着ている服の下に
 体全体に、うろこが生えていると想像してみて下さい。

 この体に生えているわけですから
 うろこが大きくて
 下着にひっかかって、ざらざらしていたり生臭いのです。

 洋服の下だから
 他人が外から見ても気づきません。

 でも、自分としてはすごく気持ち悪いのです。
 でも全くまわりからは分からない。

 自分は水の中で話しているような
 ぴよぴよした声しか聞こえないのに
 周りからは全然分かってもらえない。

 でも自分にとってはひどく気持ちが悪いのです。

 ただ、その一番奥にあるこころの部分では
 自分はまともな人間なんだ、という気分もちゃんとあるんです。

 だから、体は別の物だけれどもこころは人間だというような
 自分を半漁人のような感じで意識を持っていました。

 そういう気持ちをぬぐえないのが自分でした。

 小学校の林間学校の時に
 女生徒だけ集められて、性教育を受けました。
 初潮の為の教育ですね。

 その時に最もショックだったのが
 成人男性の裸と
 成人女性の裸の図でした。本当にショックでした。

 男性には男性器がはっきりある訳です。
 そして女性には乳房と女性器がある訳です。

 自分は外出もしなくいし運動もできなかったので
 肥満児だったので胸が出ていましたが、
 それはおすもうさんと同じなのだと単純に考えていました。

 胸の形を、毎晩鏡に映していました。

 そこで鏡に映っていた姿が、
 性教育の成人女性の裸の図と同じだったのです。

 それまでは自分は成長したら必ず男になると思っていたのが
 そうではないんだ、ということがハッキリわかって、
 本当にショックを受けました。

 これ以上のショックは2度とありませんでした。
 人生で最初で最後の大きなショックでした。

---------------------------------------------

 タレントさんでカルーセル真紀さんがいますが、
 私がショックを受けていた35年前の当時に
 手術のことでテレビに出まくっていました。

 幼いながら私はそうしたテレビを観て、

 「この人は男から女になる為に外国に行ってきた。
  私も国内で女から男になれるはずだ」

 と、小5の時に決心をしました。
 それから必死にお金を貯めました。

 結局10才の頃からお金を貯めて、
 大学を卒業した年に手術をしました。

 体への違和感に長い間苦しみましたが、
 手術をすることそのものに悩むことは少なかったです。

 今、こどもたちから

 「死にたいんだ」「うつなんだ」という相談をよく受けますが
 私自身はうつっぽくなったことはありません。

 「必ず手術をする」という想いが
 とても強固だったからだと思います。

 どこで手術をするのか、どう手術をするかなどは
 全く分からなかったのですが、だけど、できると信じていました。

 中・高は制服を着ていましたが、
 大学時代はTシャツにGパンで行くわけです。

 流産防止剤のせいで、外見は男性っぽく見られていました。
 もっと今よりも毛深くてまゆげも太くて
 生理も年1回くらいしか来ませんでした。

 けれども巨乳だったので、それがイヤで仕方がなかったです。

 私は、前の晩から寝る前に
 明日着る服を着やすいようにして置いておくんです。

 朝、目が覚めたら
 まぶたをあけずに目をつむったままに着るんです。
 とにかく自分の体を見たくなかったから。

 トイレに入っても一切、自分の性器を観ないようにしていました。

 シャワーに入っても、
 可能な限り自分の性器に触れないようにするんです。

 これは私だけではなくて、体を洗う、ということでさえ、
 やわらかい胸や下半身の女性器に触れてしまった瞬間に
 肉体が女性であるということを強く意識させられてしまうのです。

 自分の体に対する激しい違和感から
 触わることさえ嫌悪感が強くてできない人もたくさんいます。

 大きな胸を隠すために、さらしという布を幾重にも巻きました。
 7回くらいギリギリと巻きました。
 そうすると、胸が潰れて平らになるんです。

 そうやって服を着る訳です。

 今日のように涼しい日ならまだいいけれど、
 夏の暑いさかりには
 とっても暑い中で7枚下着を着ているようなものです。

 体が弱かったこともあって、
 道端でふらふらして倒れてしまうことがありました。

 通りすがりの方が「大丈夫か?」と尋ねてくれるけれど
 声を出せないんです。

 外見は男性のようなのに
 声を出したら、女性の声に聞こえてしまうからです。

 ドラマ『金八先生』で上戸綾さんが演じた生徒が
 ノドに大きな鉄の針を刺したシーンがあります。

 性同一性障害を理解しない頑固な父親が
 お前は女なんだと怒鳴って、胸をわしづかみにした時、
 上戸さんの役は「キャッ」と高い声で叫んでしまったのです。

 その悲鳴の声が女性のもので
 自分自身の声にまた嫌悪を感じて
 自分のノドにチーズフォンデュの時に使う鉄の針を刺したのです。

 このシーンが放送された後、放送局に抗議がいったそうです。
 過激すぎる、あまりにもひどい、と。

 でも、それは実話なんです。

 私自身の体験ではないのですが、
 本当に私の友人たちは何人もそれをやりました。

 のどを鋭い針で何度も何度も刺して
 出血もひどいのですが
 2~3日目には声が変わった、と喜んでいました。

 私自身は体が弱かったし、それはできませんでしたが
 こうやって声を変えた人は何人もいました。

 さっきの話に戻りますが、倒れてしまった時には、
 英単語のカードのようなものを作っておいて

 「大丈夫です」「ありがとう」のように
 カードを見せていました。

 大学に行ったり
 バイトに行く時にはそういったことはしなかったけれど

 知らない人の前では
 絶対に名乗らなかったし、話すことはありませんでした。

 声はとても大きなファクターです。
 私は声が変わるまでは、筆談で何とかやっていました。

 昔の学生だから
 大学に行かないとかひきこもりになるということはなくて
 とにかく手術の為にバイトをしていました。

 父はとても厳しいので、男っぽい女がキライだということで
 「強姦されてしまえ」
 と言われたりして
 真夜中に外へ追い出されてしまったこともありました。

 レイプをされてしまえば、女らしくなるだろう、
 ということだったのでしょう。私は悲しくてたまりませんでした。

 それでも母親は優しかったです。
 母親に泣かれることのほうがイヤでした。

 だいたいの場合は、
 中高年の男性の方が理解がありません。

 若い学生を見ていても
 男の子の方が理解がありません。

 今はだいぶ変わってきました。

 でもやっぱり男の方が
 理解が少ないです。

 自分の価値観を揺らがされる事態を前にして
 多くの男性は、笑うか怒るかしかないんですね。

 実際に、多くの場合、
 母親やお姉さんの方が理解が高いです。

 うちの場合には母親が理解してくれて、
 手術後にも軟膏を置いておいてくれたりしました。

 私はいつも一人でいるほうがラクでした。

 自分の体に違和感がある限り、
 起きている間は一瞬も気持ちが休まらないのです。

 みなさんも気になることがある時は眠りが浅いように、
 起きている間は気持ちが休まらないだけでなく
 浅い眠りが何年も続くわけですから、不眠症になってしまうのです。

 眠っても明日のことを
 「明日も今日のくりかえしかな」とか毎日考えてしまうのです。

 大学を卒業して、3日後に手術をして帰ってきた時には
 初めて安心して眠ることができました。

 手術後の気持ちは人によって様々だと思います。

 600万円もの手術代がかかりましたが、
 私の場合は、とにかく『安心』の気持ちだけでした。

 女性から男性になる方が
 働いても稼ぎが少ないですから収入が少ないのに
 男性から女性になることの3倍も費用がかかりました。

 私は、手術を受ける前に15年働き続けて、
 手術後には借金を返すために18年働きました。

 合計で3回手術をしましたけれども
 体がとても弱かったので
 毎回この世に戻って来れないのかなと思いました。

 手術が終わって麻酔が覚めて
 目をあけてみると、ああ、この世だった、と思いました。

 『安心』の最大の理由は、
 こころと体の性別が一致した、ということです。

 会場のみなさんは
 こころと体の性別の両者が一致している人が
 ほとんどでしょうけれども

 そこに近い段階にようやくきたことが
 25年生きてきて、ようやく近づいたということですね。

 性同一性障害である自分たちを
 そうではない方々と分けるのはどうかと思いますが

 ふつうの悩みだけ悩めばいい
 というのは、本当に幸せなんだなと手術後に感じました。

 それは性同一性障害があったからですね。

 ふつうの人生の悩みを持つことはみんな同じですが
 その前に私たちは、自分自身のこころと体の不一致に対して
 嫌悪感をいつも抱いているという悩みがあるのです。

 手術が終わって、ようやくその悩みが取れつつあって、
 ふつうの悩みだけを悩む暮らしというのは
 とても幸せだなと感じたのです。


 (続きます)

共通テーマ:日記・雑感

「性同一性障害を知っていますか」講演会(前編) [性的な多様性・LGBTI]

(2008年11月4日(火)の活動日記その2)

● 虎井まさ衛さん講演会「性同一性障害を知っていますか」(前半)

 さて、ついに虎井さんの講演です。
 配布された資料はこちらです。
 (http://www.hide-fujino.com/pdf/2008/nov/04document.pdf

 (ここから先の内容は、フジノのメモを元にしております。
  誤った記述があるかもしれません。

  フジノ自身、日々勉強をして学んでいますが
  まだまだ正確な理解には至っていないのが現状です。
  したがいまして、虎井さんのお話を理解しきれずに
  誤って理解して、文章にしている部分が多い可能性もあります。
  そういった文責は全てフジノにありますので、
  どうかあらかじめご了解ください。

  また、誤っている点については
  ぜひフジノまでご指摘ください。よろしくお願いします。
  メールはこちら:fujinohideaki@yahoo.co.jp)


------------------------------------------------

 <虎井さんのお話>

 今日お配りした資料をどうぞご覧下さい。

 専門用語のページがありますが、
 ぜひ、養護教諭の方々には覚えていただきたいと思います。

 何故なら、こどもたちが学校で相談に行く場合、
 まずだいたい最初に相談に行くのは養護教諭の方々なのですね。
 ぜひ知っていてください。

 全国的に見ると、性的な多様性についての教育は
 関西・九州の方がさかんです。

 関東では、生徒のプライバシーということから
 あえて表ざたにしないところが多いです。

 でも実際には、カミングアウトするこどもたちは
 かつてと比べると低年齢化してきています。
 本当に多くのこどもたちが性的マイノリティとして存在しています。

 これからは、おこさんのパートナーが性的マイノリティである、
 あるいは仕事の面接に来る人が性的マイノリティである、
 こういったことはふつうのこととして起こりえます。

 あなたにとって
 全く無関係ではないということを知ってほしいと思います。

04MrTorai1.jpg


 今日のお話は、前半は基本的な説明です。
 後半は私自身の半生をお話します。

 では、性同一性障害について知っていただく為の
 まずは基本的なお話です。

 資料の3ページにある『TV』というのは
 トランスヴェスタイトのことです。

 昔でいうところのチョッキをヴェストと言いますから
 ヴェスタイトというのは洋服のことですね。

 服装をトランスする、ということは
 異性の服装をするということです。

 女性はパンツルックもありますから
 男装をしても外見から違和感はありませんが、
 男性が異性装をして、スカートなどをはくと目立ってしまいます。

 でも、このトランスヴェスタイトということと、
 テレビのニュースなどで
 下着を盗んで逮捕された、
 性的な関心を高める為に下着を盗んでそれを異性装に使った、
 という事件などが報道されることがありますが
 ほとんどのTVの方はそんなことはしません。

 『TS』と書いてあるのは、トランスセックスです。
 セックスというのは日本では性行為のことだと思われますが
 身体的な性別のことを指しています。

 身体的な性別をトランスするというのは
 いわゆる、手術をしたい人のことです。

 性別適合手術は、今では割と制度が整ったので
 悲壮感は少なくなりましたが

 かつては、自分の今も現在も過去も家族も捨てて
 思いつめて行なうことが多かったと思います。

 (フジノ注:かつて性転換と呼ばれていた用語は
  現在では性別適合手術と呼ばれています。
  このHPでもその用法に従い、性別適合手術と記します)

 実は、世間のイメージとは異なって、
 実際に手術へと踏み切る人は、あまり多いものではありません。

 ここに世間と現実の大きな認識のずれがあります。

 性別適合手術をしたから
 男らしくなるとか
 女らしくなるというのではありません。

 手術によって、変わるのではありません。

 すでに、肉体の性とこころの性とが一致していないのを
 手術することによって両方を一致させる、
 本当の体に戻す、
 手術にはむしろそのような意味合いがあります。

 次に『TG』ですが、トランスジェンダーのことです。
 ジェンダーというのは、社会的・文化的な性別という意味です。

 先ほど性別適合手術の話をしましたが、
 手術にいたる人は実際には多くありませんと申し上げました。

 手術までは至らずに、ホルモン注射を続けることによって、
 かなりの変化が大きく起こるのです。

 そこで、狭い意味での『TG』の方々は
 あえて手術まではしない方々も多くいらっしゃいます。

 ただ、手術を選んだ人もホルモン注射のみを選んだ人も
 いずれの人も、人生のどこかの時期で
 性をトランスしたいという想いは同じだと思います。

 最近はマスメディアの報道も増えてきましたし
 例えば、NHKの「ハートをつなごう」という番組やドラマによって
 トランスジェンダーという言葉を
 1回くらいは聞いたことがある人はいても

 毎日の生活の中では
 なかなかトランスジェンダーという言葉を
 聞くことは少ないと思います。

 かつては『金八先生』のドラマ、
 最近では『ラストフレンズ』というドラマでとりあげられました。

 『ラストフレンズ』では登場人物の1人が
 性別違和感症候群という診断をされていました。

 現在ではこの言葉は
 診断名としてはもう使われていないのですが
 ドラマを観ている方々への分かりやすさの為に
 使われたのではないかと思います。

 現実の『性同一性障害』では、
 自分の体に対する感じは
 違和感というような軽い表現ではあらわせません。

 それこそ、朝から晩まで激しい違和感で
 学業も仕事も手につかなくなってしまう。
 生活をしていてもとても苦しさを感じる方もいらっしゃいます。

 けれども、正式に医学的な診断はカンタンには出ないんです。
 短くて半年、長くて10年かかる方もいます。

 『障害』という呼び方はどう思うかという人もいてくれはいるが
 あくまでも医療のもとでの診断名なので、
 ある程度、便宜的に便利なので使っています。

 繰り返しになりますが、
 『性同一性障害』イコール『性別適合手術をしたい人』というのは
 大きな誤解なのですね。

 あえてパーセンテージで言うならば、
 全体のうち、1%くらいだけが手術をしているでしょうか。

 残りの99%は手術にまでは至らないで
 ホルモン注射などで対応している場合が多いです。

 ところで、『ニューハーフ』とか『おなべ』という言葉については
 私見ですが、職業名と同じかな、と考えています。

 実際にそうしたお店で働いている人の中には、
 同性愛の方もいれば、性同一性障害の方もいれば、
 ストレートだけれども仕事だからあえてやっている、という人もいます。

 一般的に、私が大学などで学生たちにお話をしてみると
 学生さんたちが一番知らないのは
 『同性愛』との違いのことです。

 性的指向ということが、同性愛のキーワードです。

 同性愛の方は、人が100人いたら
 3人~10人は存在するというデータがあります。

 性同一性障害の方は2万人に1人くらいと言われています。

 ただし、これはドクターに行っている方々の数から
 統計で出されたもので、本当はもっと多いはずですね。

 さて、性的指向というのは、
 かなりバラバラに分けられるものです。
 資料の枠組みの、どこにも入らないという人もいらっしゃいます。

 非異性を好きになる同性愛の人は
 一般に暮らしていて、ごはんを食べていたり、自転車に乗っていたり、
 ふつうに暮らしていて気づく、ということはありません。

 『相手』を好きになった瞬間に、同性愛なのだと気がつくんです。

 同性愛というのは、恋愛の話なのです。
 当事者の中でも混乱している人もいらっしゃいますし、
 マスメディアの誤解もあります。

 一方、『性同一性障害』の場合は、自分自身が問題なのです。
 相手が存在するとかしないとかのことでは無いのですね。

 自分自身が自分の性別をどう認めるか、
 自認するのかということ問題で、
 こころと体の性別のずれをどう捉えるかということなのです。

 今日ここにいらっしゃる多くの方々は、
 こころと体の性が一致しているとは思いますが
 性同一性障害である人は、その2つが一致していないのです。

 ●

 かつて、カミングアウトをした生徒がいた学校に招かれて
 PTA向けの説明会でお話をしたことがあります。

 質疑応答の時間になるとしばしば尋ねられたのが

 「原因が何であるのか教えてほしい」

 ということでした。

 原因を追究することそのものは不毛ですよ、とお答えしても
 多くの先生方がこの質問をされました。

 そこで、少しだけ、原因についてのお話をします。

 かつて1980年代は『育て方』が原因だと言われていました。
 養育説や環境説と呼ばれていました。

 例えば、きょうだいがお姉さんばかりの末っ子として生まれたら、
 大人になったら女っぽくなってしまった、
 ということを言う人もいました。
 こうしたことが1980年代はまことしやかに言われていました。

 でも、実際は育て方で
 性同一性障害が起こることはありません。

 1990年代は、
 脳の性分化にアクシデントが起きたのではないか、と
 研究者たちは言いました。

 妊娠して、おなかの中にいる胎児は早い時期にはみんな
 体もこころも女性として存在している。
 やがて睾丸ができて、男性に変化していく。
 でも、脳への男性化への指令がうまく届かないということがある。
 それによって性同一性障害が起こると言ったのですね。

 ところが2004年、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に
 スウェーデンのランデンという学者が
 脳の性分化のアクシデントを起こす
 遺伝子を持っている人がいるのではないかと言い出したのです。
 つまり、遺伝子説ですね。

 さらに今年10月にはオーストラリアの博士が、
 性転換遺伝子をつきとめたと主張しました。

 だんだん遺伝子説での説明がつきはじめています。
 ただ現在のところ、正確な原因というものは断定されていません。

 ただし、原因が何かというお話は
 最初に申し上げたとおりで、
 人は様々であるのが本来の姿ですから

 研究は研究として進められるべきですが
 実際の生活の場では、
 そこを追究することには大きな意味は無いと思います。

 多様な性を率直に受け止められるように
 社会が変わっていくことの方が、より良いことではないかと思います。


 (続きます)

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虎井まさ衛さん講演会「性同一性障害を知っていますか」 [性的な多様性・LGBTI]

(2008年11月4日(火)の活動日記その1)

● 虎井まさ衛さん講演会「性同一性障害を知っていますか」

 ついに今日、虎井まさ衛さんの講演が行なわれました!

 虎井さんのお名前は知らなくても、
 ドラマ『金八先生』(第6シーズン)で上戸綾さんが演じた
 性同一性障害に悩み苦しんだ生徒・鶴本直のことは
 みなさん、覚えていませんか?

 鶴本直のモデルこそ、虎井さんなのです。

 『金八先生』の脚本家である小山内美江子さんが
 虎井さんを徹底的に取材して、あのドラマが実現したのですね。

 この横須賀で、虎井さんの講演会が実現したことは
 フジノにとって、大きな感動です。

04entrance.jpg

 タイトルは『性同一性障害を知っていますか』です。

 すでに9月29日の活動日記に記したとおりで、
 今回の講演は、教育委員会(生涯学習部門)によるものです。

 それは、性的な多様性の保障に対する
 横須賀市教育委員会としての
 『問題意識の高さ』を
 『行動』で実際に表したものだ、とフジノは高く評価しています。

 いわゆる性的マイノリティとされる方々、
 LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)など
 その呼び名は様々ですが

 人間が持つ性的な指向性は、もともと様々なのです。
 統計やあらゆる研究からも、これは『事実』として明らかです。

 にも関わらず、差別・偏見・スティグマによって
 いわゆる性的マイノリティとされる方々は苦しめられています。

 特に、多くのこどもたちが自傷行為に追い込まれ、
 さらには自殺に至っているという現状があります。

 政治家としてフジノは、この現実を絶対に変えたいと訴えてきました。

 その訴えを、教育委員会も誠実に受け止めてくれて、
 これまでも多くの行動を起こしてくれました。

 今回の講演でも、改めて教育委員会の本気度を感じました。

 その証拠に、講演の前になされた
 教育長によるあいさつは、感動的なものでした。

 いわゆる性的な多様性を保障するために
 私たちは努力を続けねばならないとの主旨のあいさつでした。

 フジノは逐語でメモを取れなかったので
 あくまでもその場での記憶に過ぎないのですが

 議会での答弁よりも踏み込んだ
 強い決意のあらわれを教育長は述べてくれたように感じました。
04suptofscools.jpg

 ちなみに教育長は、
 これまで放送されたNHK『ハートをつなごうLGBT特集』をはじめ、
 つい先日(11月1日)放送された
 ETVワイドのLGBT特集も観てくれたそうです。
 (ありがとうございます!)

 加えて、教育長の本当に素晴らしかったことは
 講演が終わる最後まで参加してくれたことです。

 これは、多忙な教育長のスケジュールを考えると
 極めて異例なことだと感じました。

 教育長を筆頭に、生涯学習課のみなさま、
 今日の講演会の開催、本当にありがとうございました。

 性的な多様性を保障するということは
 人権課題としても当然のことではありますが

 何よりも教育長のリーダーシップのもと、
 こどもたちの命を守る為に
 教育委員会が積極的にがんばっていることを

 僕は一市民として、また、このまちの政治家として
 本当に誇りに感じます。


 (講演会の内容は次に書きますね)

共通テーマ:日記・雑感

性的マイノリティの方々の生の声を、教育長に届けよう! [性的な多様性・LGBTI]

(2008年10月23日(木)の活動日記)

● 性的マイノリティの方々の生の声を、教育長に届けよう!

 まず最初に、先月22日の教育経済常任委員会で
 フジノが教育長と行なった質疑を載せますので、
 ご覧下さい。


 (2008年9月議会・教育経済常任委員会・所管事項でのフジノの質疑より)
 <フジノの質問>
  こういう風に今までいろいろな提案を、
  いわゆる性的マイノリティとされる方々のサポートについて
  提案をさせていただいてきたのですが

  夏、いろんな多くの方々とお会いする中で、
  やはり生の声に耳を傾けるということが非常に重要だなと感じました。

  以前、本会議で市長と教育長に

  「直接にいわゆる性的マイノリティとされる方々に
   お会いしたことがありますか」

  とお聞きしたところ、お2人とも無かったと。

  そこでやはり改めてご提案させていただきたいことは、
  僕自身が様々な対策を代弁者として市議会で提案するのも
  確かに有効かとは思うのですが

  もし教育長がお許しをいただけるのであれば
  いわゆる性的マイノリティとされる
  LGBTの若者たちに会う機会というのを
  作っていただけないかという風に思います。

  もし、前向きなご答弁をいただければ
  いくらでも機会というのは作れると思いますので
  そういった点についてどのようにお考えでしょうか。

  <教育長の答弁>
  わたくしが自分の席に座っていたのでは
  何も教育の現場の様子が分からないのと同じように

  やはり当事者であられる方たちが
  何に悩み、どうしてほしいのかというのは

  やっぱり直接お会いし、お話を聞くということは
  たいへん大事だと
  わたくしこれまでの経験からも思っております。

  そういう機会は積極的に
  これから作っていくことが必要だと思っておりますし

  そういう方たちの声、あるいはご意見を
  お会いする中で聞くことができれば

  今後の中学校等におきますそういったお子さんたちの
  学びやすい環境づくりというところには
  きっと反映させていくことができると思いますので

  私はぜひ声を聞きたいと
  このように思っております。

  (引用、終わり)

 フジノは生の声に耳を傾けることこそが
 最も大切だと考えていますが

 教育長も同じお考えを
 はっきりと示してくれました。

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 それから、1ヶ月。

 信頼できる方に、どんな形でこの『場』を行なうのが良いかを
 フジノは現在、相談にのっていただいています。

 また、今日は教育長にお時間を取っていただき、
 日程の調整をさせてください、と申し上げました。

 われらが教育長はとても熱心な方なので

 「フジノ議員、市役所の時間内(夕方17時まで)には
  こだわらないでけっこうですよ。

  学生の方も働いている方も
  むしろ夜の時間帯の方が
  きっとみなさん集まりやすいでしょうから」

 ということで、市役所が閉庁した後に
 この『場』を行なう可能性が高くなりました。

 こういう積極的な姿勢をうかがうにつけても
 やっぱりさすが教育長だと改めて感じました。

 さて、実際の懇談の『場』がどのようなものになるかは
 まだまだこれから調整していかなければならないのですが

 とても有意義な、横須賀市初の試みになることと思います。


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 ちなみに、昨日訪れた
 『かながわレインボーセンターSHIP』が発行している
 紹介のパンフレットと

 その内容の良さに感激したフジノが
 大量に頂いてきた『ぼく、わたしって変なの?』の2つを

 教育委員会事務局の幹部である
 教育長、生涯学習部長、管理部長、学校教育課長、生涯学習課長に
 総務の方を通じて、お渡ししていただきました。

 それから、人権課題を担当している
 市民部の人権・男女共同参画課長のところには直接訪れて
 手渡ししました。

 今年異動してこられた人権・男女共同参画課長は
 実際に『SHIP』を訪れたことは無いものの
 その存在はすでに知っていたとのこと、とても期待できそうでした。

 人権・男女共同参画課が中心になって原案を作った
 まもなく『人権施策推進指針(仮)』も
 パブリックコメントにかかりますから(11月5日からです)

 ぜひ市民のみなさまにたくさんのご意見を
 お願いしたいと思います。



 ●

 ここ数日は、なかなか活動日記には
 記すことができない動きをたくさんしておりまして

 「フジノの活動は、最近ものたりないなあ...」とお感じの方も
 たくさんいらっしゃるとは思うのですが

 いずれ、数年後には

 「そうか、あの時フジノはこれをやってたのか」

 と、ご理解いただけると思います。

 それではみなさま、
 りらっくす&ふぁいとですよ。

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