SSブログ

「性同一性障害を知っていますか」講演会(前編) [性的な多様性・LGBTI]

(2008年11月4日(火)の活動日記その2)

● 虎井まさ衛さん講演会「性同一性障害を知っていますか」(前半)

 さて、ついに虎井さんの講演です。
 配布された資料はこちらです。
 (http://www.hide-fujino.com/pdf/2008/nov/04document.pdf

 (ここから先の内容は、フジノのメモを元にしております。
  誤った記述があるかもしれません。

  フジノ自身、日々勉強をして学んでいますが
  まだまだ正確な理解には至っていないのが現状です。
  したがいまして、虎井さんのお話を理解しきれずに
  誤って理解して、文章にしている部分が多い可能性もあります。
  そういった文責は全てフジノにありますので、
  どうかあらかじめご了解ください。

  また、誤っている点については
  ぜひフジノまでご指摘ください。よろしくお願いします。
  メールはこちら:fujinohideaki@yahoo.co.jp)


------------------------------------------------

 <虎井さんのお話>

 今日お配りした資料をどうぞご覧下さい。

 専門用語のページがありますが、
 ぜひ、養護教諭の方々には覚えていただきたいと思います。

 何故なら、こどもたちが学校で相談に行く場合、
 まずだいたい最初に相談に行くのは養護教諭の方々なのですね。
 ぜひ知っていてください。

 全国的に見ると、性的な多様性についての教育は
 関西・九州の方がさかんです。

 関東では、生徒のプライバシーということから
 あえて表ざたにしないところが多いです。

 でも実際には、カミングアウトするこどもたちは
 かつてと比べると低年齢化してきています。
 本当に多くのこどもたちが性的マイノリティとして存在しています。

 これからは、おこさんのパートナーが性的マイノリティである、
 あるいは仕事の面接に来る人が性的マイノリティである、
 こういったことはふつうのこととして起こりえます。

 あなたにとって
 全く無関係ではないということを知ってほしいと思います。

04MrTorai1.jpg


 今日のお話は、前半は基本的な説明です。
 後半は私自身の半生をお話します。

 では、性同一性障害について知っていただく為の
 まずは基本的なお話です。

 資料の3ページにある『TV』というのは
 トランスヴェスタイトのことです。

 昔でいうところのチョッキをヴェストと言いますから
 ヴェスタイトというのは洋服のことですね。

 服装をトランスする、ということは
 異性の服装をするということです。

 女性はパンツルックもありますから
 男装をしても外見から違和感はありませんが、
 男性が異性装をして、スカートなどをはくと目立ってしまいます。

 でも、このトランスヴェスタイトということと、
 テレビのニュースなどで
 下着を盗んで逮捕された、
 性的な関心を高める為に下着を盗んでそれを異性装に使った、
 という事件などが報道されることがありますが
 ほとんどのTVの方はそんなことはしません。

 『TS』と書いてあるのは、トランスセックスです。
 セックスというのは日本では性行為のことだと思われますが
 身体的な性別のことを指しています。

 身体的な性別をトランスするというのは
 いわゆる、手術をしたい人のことです。

 性別適合手術は、今では割と制度が整ったので
 悲壮感は少なくなりましたが

 かつては、自分の今も現在も過去も家族も捨てて
 思いつめて行なうことが多かったと思います。

 (フジノ注:かつて性転換と呼ばれていた用語は
  現在では性別適合手術と呼ばれています。
  このHPでもその用法に従い、性別適合手術と記します)

 実は、世間のイメージとは異なって、
 実際に手術へと踏み切る人は、あまり多いものではありません。

 ここに世間と現実の大きな認識のずれがあります。

 性別適合手術をしたから
 男らしくなるとか
 女らしくなるというのではありません。

 手術によって、変わるのではありません。

 すでに、肉体の性とこころの性とが一致していないのを
 手術することによって両方を一致させる、
 本当の体に戻す、
 手術にはむしろそのような意味合いがあります。

 次に『TG』ですが、トランスジェンダーのことです。
 ジェンダーというのは、社会的・文化的な性別という意味です。

 先ほど性別適合手術の話をしましたが、
 手術にいたる人は実際には多くありませんと申し上げました。

 手術までは至らずに、ホルモン注射を続けることによって、
 かなりの変化が大きく起こるのです。

 そこで、狭い意味での『TG』の方々は
 あえて手術まではしない方々も多くいらっしゃいます。

 ただ、手術を選んだ人もホルモン注射のみを選んだ人も
 いずれの人も、人生のどこかの時期で
 性をトランスしたいという想いは同じだと思います。

 最近はマスメディアの報道も増えてきましたし
 例えば、NHKの「ハートをつなごう」という番組やドラマによって
 トランスジェンダーという言葉を
 1回くらいは聞いたことがある人はいても

 毎日の生活の中では
 なかなかトランスジェンダーという言葉を
 聞くことは少ないと思います。

 かつては『金八先生』のドラマ、
 最近では『ラストフレンズ』というドラマでとりあげられました。

 『ラストフレンズ』では登場人物の1人が
 性別違和感症候群という診断をされていました。

 現在ではこの言葉は
 診断名としてはもう使われていないのですが
 ドラマを観ている方々への分かりやすさの為に
 使われたのではないかと思います。

 現実の『性同一性障害』では、
 自分の体に対する感じは
 違和感というような軽い表現ではあらわせません。

 それこそ、朝から晩まで激しい違和感で
 学業も仕事も手につかなくなってしまう。
 生活をしていてもとても苦しさを感じる方もいらっしゃいます。

 けれども、正式に医学的な診断はカンタンには出ないんです。
 短くて半年、長くて10年かかる方もいます。

 『障害』という呼び方はどう思うかという人もいてくれはいるが
 あくまでも医療のもとでの診断名なので、
 ある程度、便宜的に便利なので使っています。

 繰り返しになりますが、
 『性同一性障害』イコール『性別適合手術をしたい人』というのは
 大きな誤解なのですね。

 あえてパーセンテージで言うならば、
 全体のうち、1%くらいだけが手術をしているでしょうか。

 残りの99%は手術にまでは至らないで
 ホルモン注射などで対応している場合が多いです。

 ところで、『ニューハーフ』とか『おなべ』という言葉については
 私見ですが、職業名と同じかな、と考えています。

 実際にそうしたお店で働いている人の中には、
 同性愛の方もいれば、性同一性障害の方もいれば、
 ストレートだけれども仕事だからあえてやっている、という人もいます。

 一般的に、私が大学などで学生たちにお話をしてみると
 学生さんたちが一番知らないのは
 『同性愛』との違いのことです。

 性的指向ということが、同性愛のキーワードです。

 同性愛の方は、人が100人いたら
 3人~10人は存在するというデータがあります。

 性同一性障害の方は2万人に1人くらいと言われています。

 ただし、これはドクターに行っている方々の数から
 統計で出されたもので、本当はもっと多いはずですね。

 さて、性的指向というのは、
 かなりバラバラに分けられるものです。
 資料の枠組みの、どこにも入らないという人もいらっしゃいます。

 非異性を好きになる同性愛の人は
 一般に暮らしていて、ごはんを食べていたり、自転車に乗っていたり、
 ふつうに暮らしていて気づく、ということはありません。

 『相手』を好きになった瞬間に、同性愛なのだと気がつくんです。

 同性愛というのは、恋愛の話なのです。
 当事者の中でも混乱している人もいらっしゃいますし、
 マスメディアの誤解もあります。

 一方、『性同一性障害』の場合は、自分自身が問題なのです。
 相手が存在するとかしないとかのことでは無いのですね。

 自分自身が自分の性別をどう認めるか、
 自認するのかということ問題で、
 こころと体の性別のずれをどう捉えるかということなのです。

 今日ここにいらっしゃる多くの方々は、
 こころと体の性が一致しているとは思いますが
 性同一性障害である人は、その2つが一致していないのです。

 ●

 かつて、カミングアウトをした生徒がいた学校に招かれて
 PTA向けの説明会でお話をしたことがあります。

 質疑応答の時間になるとしばしば尋ねられたのが

 「原因が何であるのか教えてほしい」

 ということでした。

 原因を追究することそのものは不毛ですよ、とお答えしても
 多くの先生方がこの質問をされました。

 そこで、少しだけ、原因についてのお話をします。

 かつて1980年代は『育て方』が原因だと言われていました。
 養育説や環境説と呼ばれていました。

 例えば、きょうだいがお姉さんばかりの末っ子として生まれたら、
 大人になったら女っぽくなってしまった、
 ということを言う人もいました。
 こうしたことが1980年代はまことしやかに言われていました。

 でも、実際は育て方で
 性同一性障害が起こることはありません。

 1990年代は、
 脳の性分化にアクシデントが起きたのではないか、と
 研究者たちは言いました。

 妊娠して、おなかの中にいる胎児は早い時期にはみんな
 体もこころも女性として存在している。
 やがて睾丸ができて、男性に変化していく。
 でも、脳への男性化への指令がうまく届かないということがある。
 それによって性同一性障害が起こると言ったのですね。

 ところが2004年、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に
 スウェーデンのランデンという学者が
 脳の性分化のアクシデントを起こす
 遺伝子を持っている人がいるのではないかと言い出したのです。
 つまり、遺伝子説ですね。

 さらに今年10月にはオーストラリアの博士が、
 性転換遺伝子をつきとめたと主張しました。

 だんだん遺伝子説での説明がつきはじめています。
 ただ現在のところ、正確な原因というものは断定されていません。

 ただし、原因が何かというお話は
 最初に申し上げたとおりで、
 人は様々であるのが本来の姿ですから

 研究は研究として進められるべきですが
 実際の生活の場では、
 そこを追究することには大きな意味は無いと思います。

 多様な性を率直に受け止められるように
 社会が変わっていくことの方が、より良いことではないかと思います。


 (続きます)

共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。