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うつ病のリワークプログラム/GP連携をさらに進めていく為に [自殺予防対策]

(2009年10月9日(金)の活動日記)

● うつ病のリワークプログラム/GP連携をさらに進めていく為に

 今日は、19時から21時すぎまで
 横須賀中央のセントラルホテル4階にて学術講演会に参加しました。

 横須賀市医師会、横須賀三浦精神科医会、明治製菓(株)の共催です。

 メインとなって活動して下さっているのは
 自殺対策連絡協議会・委員長であり
 横須賀三浦精神科医会・会長である
 われらが大滝紀宏先生(湘南病院・副院長)です。

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 いつもフジノはくりかえしこの活動日記の中

 「自殺予防対策をすすめる為には
  かかりつけ医(G)と精神科医(P)のGP連携が不可欠だ」

 と書いてきました。

 毎年定期的に開催していただけるようになったこの学術講演会は、
 まさに、この『連携』を実現する為の活動です。

 横須賀・三浦のかかりつけ医のみなさんを対象にして
 うつ病と自殺に対する知識の提供と
 かかりつけ医と精神科医の連携の必要性を伝える為の講演会なのです。

 こうした日常的な取り組みが継続して行なわれることで

 いまや国民の誰もがかかっている『うつ病』に対して
 あなたに最も身近な『かかりつけ医』が
 より正確な対応ができるようになる、

 つまり、うつ対策が推進されていくことになります。

 ですから、一見すると何気ない講習会に見えるかもしれませんが、
 自殺予防対策をすすめる政治家フジノにとっては
 本当に重要な意味を持っています。

 開催されるたびに「本当にありがたいなあ」と
 感謝の気持ちでいっぱいになります。

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 さて、今日の講演会のタイトルは
 『気分障害の復職支援の治療的意義』です。

 このままだと分かりづらいので、くだいて書くと...。

 現在の日本では、働いているサラリーマン・OLの多くが
 うつ病にかかって心身の体調を崩して休職をしています。

 うつ病はとても再発しやすいので、いったん仕事に戻っても(=復職)
 再び休職に追い込まれるという事態がすさまじい数で起こっています。

 具体的には全国で10~30万人の方々が
 復職のための支援が必要な状態にある、と推定されています。

 けれども、この復職がなかなかうまくいっていません。

 ほとんどの方々が復職しても再発をしてしまっては再休職となって
 どんどん自信を無くしていってしまっているのが現状です。

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 こんな現状を打ち破る為に、1997年に
 秋山剛さん(精神科医)が医療機関としては初めての試みを始めました。
 職場への復帰を支援する為の『リワーク』活動をスタートさせたのです。

 『リワーク』(rework)とは、
 『リターン・トゥ・ワーク』(return to work)を略したものです。

 現在、仕事への復帰の為に援助が必要な方々は
 全国で10~30万人はいると推定されていると書きましたが

 一方、2009年5月現在、リワークプログラムは
 全国で48の施設で実践され、2000人が援助を受けています。

 まだ、ほとんどの方々(10人中9人でしょうか)が
 こうしたプログラムには全く関われていない現実があります。

 そこで、今回の学術講演会では
 リワークについてお話していただくことになりました。

 リワークプログラムを実施している全国の病院・クリニックは
 より良いプログラムへの研究・実践をすすめてるべく
 『うつ病リワークプログラム研究会』という組織をたちあげています。

 今夜の講師は、この『うつ病リワークプログラム研究会』の代表世話人である
 五十嵐良雄先生(メディアカルケア虎ノ門院長)に
 講演をしていただくことになりました。

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 上の写真が五十嵐先生です。

 それにしても偶然なのは、フジノはつい先週から
 このリワークプログラムの本を読み始めたばかりでした。

 『うつ病リワークプログラムのはじめ方』
    (うつ病リワーク研究会著、2009年、弘文堂)

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 そこに、おととい、大滝先生から学術講演会へのお誘いをいただいて
 今まさに読んでいる本を出版された研究会のたちあげをなさった方から
 じかにお話を聴けるなんて、本当にラッキーでした。


● リワークプログラムから外れた人たちがとても気になります...

 残念ながら現在のところ、横須賀・三浦には
 うつ病リワーク研究会の正会員となっている医療機関はありません。

 最寄で言うと、

 上大岡駅前の『ヒルサイドクリニック・就労支援デイケア』

 金沢八景駅から乗り換えてシーサイドラインの市大医学部駅にある
 『横浜市立大学付属病院精神科デイケア』
 横浜駅西口の『横浜ストレスケアクリニック・復職支援ショートケア』

 あたりでしょうか。

 実は、うつ病からの復職支援プログラムには
 フジノはあまり関心がありませんでした。

 もちろん参考文献を読み漁ったことはあるのですが、
 どうもフジノの感性とは合わない、という想いが当時にありました。

 けれども今年の夏、うつ病によって
 休職→復職→再発→休職中という方から相談をいただいて

 改めて勉強しなおそうかと考えました。

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 そこでリワークプログラムとも出会いました。

 ただ、今日の講演を聴いても感じたのですが
 やっぱり数年前に初めて参考文献を読んだ時の印象がぬぐえません。

 リワークプログラムは、この時代には必要なのは事実です。
 20万人近くの方々が復職できずに苦しんでいるのです。
 何らかのプログラムは不可欠です。

 けれども、リワークプログラムは
 嫌な書き方をすれば、『選別』があると感じます。

 フジノはプログラムが実践されている現場を
 1度も見学したことさえありませんので、
 本来はこんな言い方をする資格は無いのだとは思います。

 けれども参考文献や今日の講演でたびたび出てくる言葉が
 フジノには気になって仕方がありませんでした。

 例えば、プログラムに通える対象者は
 在職者で休職中の人に限ること。

 これは、失業中の方よりも戻る場所がある(休職中である)人の方が
 プログラムに取り組むモチベーションも高く、実現しやすい、
 ということだそうです。

 では、失業者の方々はどこへ行けば良いのでしょうか...。

 例えば、会社から「復職支援プログラムを利用しないと復職させない」と
 指示をされてしぶしぶ来院している場合にも、
 プログラム利用の目的を説明した上で
 本人のモチベーションが低ければ、
 参加を断る場合もあります、とのこと。

 この例に限らず、プログラムに関して
 全般的についていかれない人々に対しては『選別』というか
 やめていただくことが多いような印象を受けました。

 これは、トリアージュと呼べばいいのでしょうか、
 20万人も苦しんでいる人々がいるのだから
 救える人から救っていく、治りたい気持ちが強い人から治していく...

 きっと役割分担なのでしょう。
 まず、リワークプログラムは復職できる人を復職させる。

 それは確かに正しいです。

 でも、フジノはどうしても、
 プログラムになじめなかった人々に気持ちがいってしまいます。

 プログラムにのれなかった人、外された人は、どこへ行くのでしょうか。

 自宅で沈殿しているのでしょうか。
 精神科病院に入院しているのでしょうか。

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 フジノは、うつ病からの復職支援には関心が弱いのですが
 統合失調症などの精神障がいのある方々への
 『IPS』にはとても強い関心があります。

 (IPSとは:福智先生のHPから)

 『IPS』は、あえて翻訳すれば 
 『個別職業紹介とサポートによる援助付き雇用』みたくなりますが

 リカバリーという観点からの
 精神障がいのある方々の雇用サポートプログラムです。

 IPSでは、その対象から誰かを外す、というような
 除外の基準はありません。

 基本的に『就労を希望する精神障がいのある方全てが対象』です。

 IPSを進めたい立場のフジノからすると、
 リワークプログラムの除外基準の多さは違和感が強かったです。

 新自由主義社会の自己責任論の中で
 うつ病へと追い込まれた方々が
 さらに治療の状況でも選別されてしまうなんて...

 という印象を受けてしまいました。

 とは言うものの、繰り返しになりますが
 20万人もの方々が復職できずに苦しんでおられる現状を考えれば
 実績のあるリワークプログラムをどんどん実践することにも
 大きな意味があるのかと思います。

 うつ病で苦しんでおられる方々から
 ご相談を受けることは多々ありますが

 こうしたリワークプログラムに挑戦なさるのも
 1つの良い手段かもしれません。

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